木霊（６月号）作品抄　（平成１８年）　 前ページに戻る

初蝶の影絵のやうに通り過ぐ てのひらをころがり落つる鳥の恋 人の世を身軽るにしたる木の芽風 土に生きつぐこと思ふ草矢かな 光りつつさざなみひろぐ春の湖 天からの光確かめ雪割草 草笛の吹く人の影長かりし 桜ちる声なき声の忠魂碑 花片栗あしたへ誘ふ風すこし 一列は絆のかたち鳥帰る シャボン玉はじけ小犬のとびにけり 児童たちのまろき口あく春の歌 着ぶくるる爺のひと言一行詩 嫌なことみな忘れたり犬ふぐり 霜柱ふめばわが身の鼓動めく 水底のやうな青空桃満開 音読の声の高らか新入生 白エプロン五月の風をまとひをり 日だまりは老の天国牛蒡そぐ あしたへの念ひ植込む茄子きうり 花辛夷見えて一山鎮もれる

倉科 繁登 笹井 紀子 保谷 善蔵 米山 聯子 高野 昭子 池田佐奈恵 宮崎 徳博 小林くに子 小林ヨシ子 福田喜美子 佐藤 正 小山 透 本木 文人 大坂くみ子 小林きみ子 唐木田三月 木村　陽子 川上　隆子 宮沢さく美 高山　清子 田中　昭子

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　木霊（５月号）作品抄　（平成１８年）　 前ページに戻る

大地にも天と地ありて種を蒔く 春愁をいためてしまふフライパン 早春の山の奏でる水の音 恋文のなにげなけれど春雷す 三月の水さざめけり稚魚の群 ほつこりとことばうまるる蕗のたう 初蝶やひらがな書きのやうに舞ひ 雪消えて球児の瞳きらきらす 日びかりのせせらぎ招く猫柳 公魚の泪をこぼし釣られけり 打ち込みし少女剣士の息白し 手術後の声透りけり木の芽晴 蕗の薹瀬音いよいよ高みそむ 春うららにはとり土を蹴散らして お日さまと遊び心の犬ふぐり 白といふ色胸もとに花辛夷 京菓子の萌黄色なり春茶会 青き踏みいのちのさわぐ母郷かな 遠き日の母の笑みありさくらんぼ 指先へ光あつめて芹摘みす 一語なるこだはり梅の真白に

倉科 繁登 笹井 紀子 保谷 善蔵 米山 聯子 高野 昭子 池田佐奈恵 宮崎 徳博 小林くに子 小林ヨシ子 福田喜美子 佐藤 正 小山 透 本木 文人 大坂くみ子 小林きみ子 唐木田三月 木村　陽子 川上　隆子 宮沢さく美 高山　清子 田中　昭子

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　木霊（４月号）作品抄　（平成１８年）　 前ページに戻る

雪の夜の妻の寝息の白さかな ひきぎはをわきまへてをり大焚火 若草の命育む日差しかな 帯高く結びて座せり雛の前 女系家族笑ひころげて春炬燵 ひとつだけの空つかみをり犬ふぐり 寒牡丹朱き芽のさき天めざす 寄鍋や昔語りの煮詰りぬ 口ずさむ一詩のありて春うらら にんげんのつまりは一人亀鳴けり 日記買ふ明日といふ日がある限り 墨の香に春立つ気配ありにけり 開け閉ての音のかろやか雛ともし 肉親のずらりと揃ふ春障子 心より念仏申す寒の明 旅立ちの子にふくらめる辛夷かな 天空の一筆蒼し春めける 春日なかぐんぐんひろぐ土の黒 逢へば又笑顔こんなにシクラメン トランペット空へ吹き上げ卒業す 風邪どきの民話にあそぶ昼灯

倉科 繁登 笹井 紀子 保谷 善蔵 米山 聯子 高野 昭子 池田佐奈恵 宮崎 徳博 小林くに子 小林ヨシ子 福田喜美子 佐藤 正 小山 透 本木 文人 大坂くみ子 小林きみ子 唐木田三月 木村　陽子 川上　隆子 宮沢さく美 高山　清子 田中　昭子

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　木霊（３月号）作品抄　（平成１８年）　 前ページに戻る

雄ごころにやさしさありてとろろ汁 埋火は恋の火種となりにけり 初空の心のなかは日本晴れ 芽吹くもの空に吸はるる無一物 大寒の戸隠山の男ぶり 群青の帯なす冬の千曲川 童唄春の小川のさらさらら 寄鍋の湯気に笑顔の集ひたる 積む雪の嵩だけ人の和の広ぐ 水ゑくぼそここに浮かべ春の川 少女らの足に春の日まつはりて 大志持つものの如くに懐手 冬帽子行き交ふ人の眼のまろし 種袋ずらりと光あつめをり 音もなく光りの太る軒つらら 花柄のあふれてミシン春の音 まろやかな言の葉とどく雪女 願ひ事一つに絞り初詣 今日ありて明日へはづむ冬木の芽 人の道さけて通れぬ去年今年 着ぶくれのまろまろ動く影法師

倉科 繁登 笹井 紀子 保谷 善蔵 米山 聯子 高野 昭子 池田佐奈恵 宮崎 徳博 小林くに子 小林ヨシ子 福田喜美子 佐藤 正 小山 透 本木 文人 大坂くみ子 小林きみ子 唐木田三月 木村　陽子 川上　隆子 高山　清子 宮沢さく美 田中　昭子

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　木霊（２月号）作品抄　（平成１８年）　 前ページに戻る

言霊を育ててゐたり冬木の芽 万歩計つけて大年またぎたり 犬ときて枯野の人となりにけり 夕暮るる雪野のどこか父のをり 箒目の白ひといろの淑気かな 一語一語ゆつくりしみる煮大根 いのちまだ燃ゆる色なり初茜 裸木となりたり幹の男艶 雪まとひまとひて杉の孤高なる にんげんの匂ひを消して雪積る あいさつはまづ玄関の福寿草 平凡に生きる幸せ冬至の湯 師の道のまこと貫ぬく去年今年 日のひかり鍬にあつめて冬耕す 気は長く心はまろく寒卵 落葉してものみな土に還りゆく カ瘤見え隠れして枯木立 子ら笑顔まあるく集ふお正月 雪かむり庭木それぞれ個性とも エプロンの白のすかつとお元旦 新調の冬帽にまづ一礼す

倉科 繁登 笹井 紀子 保谷 善蔵 米山 聯子 高野 昭子 池田佐奈恵 宮崎 徳博 小林くに子 小林ヨシ子 福田喜美子 佐藤 正 小山 透 本木 文人 大坂くみ子 小林きみ子 唐木田三月 木村　陽子 川上　隆子 高山　清子 宮沢さく美 田中　昭子

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